に突立っているワルデルゼイ氏とも全然違った人種なのだ。自分自身でも自分が何人種に属するかわからない単なる一個の生命……天地の間に湧き出した、医術と音楽のわかる小さな一匹の蛆虫《うじむし》に過ぎないのだ。
……その三界《さんがい》無縁の一匹の蛆虫が、コンナにまでも戦慄し、驚愕して、云い知れぬ良心の呵責をさえ受けている原因はどこに在るのだろう。
……一体自分はここへ何しに来ているのだろう。
[#ここで字下げ終わり]
私はこの死骸の堡塁の中で、曾ての中学時代に陥った記憶のある、あの虚無的な、底抜けの懐疑感の中へ今一度、こうして深々と陥《は》まり込んでしまったのであった。今の疲れ切った頭では到底、泳ぎ渡れそうにない、無限の、底無しの疑惑の海……。
そう思えば思うほど、そうした戦争哲学のドン底に渦巻いている無限の疑惑の中に私はグングンと吸い込まれて行った。見渡す限りの黒土原……ヴェルダンの光焔……轟音《ごうおん》……死骸の山……折れ砕けた校庭の樹列……そうしてあの美しい候補生……等々々も皆、そうした疑惑の投影としか思えなくなって来た。
そう思い思い私はフト大空を仰いだ。
……あの大空
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