シッカリと頼まれているのではあるまいか。
……だから、あんなに熱心に患者を診察して廻わったのではあるまいか。そうして、そんな連中を何でもない普通の自傷兵とゴッチャにして、あんな風に脅迫して、無理矢理に戦線へ送り返しているのではないか。……だから、私を利用して、その計略の裏を掻いた候補生が、あんなにニコニコと微笑しているのではなかろうか……。
[#ここで字下げ終わり]
……といったような途方もない、在り得べからざる邪悪な疑いが、腸《はらわた》の底から湧き出す胴震いと一所に高まって来た。そうしてソンナような馬鹿馬鹿しい、苦痛にみちみちた悪夢からヤッと醒めかけたような……ホッとしたような気持になると同時に私は又、急に胸がムカムカして嘔きそうな気持になって来た。何とも感じなくなっていた屍臭と石油臭が、俄《にわか》に新しく、強く鼻腔を刺戟し初めた……が……そのまま無理に平気を装って、軍医大佐の背後に突立っていた。
そうした私の疑惑を打消すかのように、向い合っていた二条の一列横隊は、私たちの眼前で同時に、反対の方向を先頭にした一列縦隊に変化した。そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方
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