て、顔を真赤にしてお辞儀をして座りました。
二人がここで頂いた御馳走は、何が何だかわからぬ位沢山で、丁度お腹は空いていたし、そのお美味《いし》かった事、頬ぺたも落ちそうで、あとから出たお菓子や果物までも一つ残さず食べてしまいました。
御馳走が済むと五分間演説が初まりました。
いの一番に飛び出したのは真《ま》っ黒々《くろくろ》の唐金《からかね》のお釈迦様でした。
「みなさん、私はいろいろな人から拝まれて、いろいろなおそなえものやお賽銭をたくさんいただきます。しかし私を拝んだり、いろいろなものを供えたりする人は、みんな欲ばりばかりで、私にすこしばかりのものをくれて、大変な幸福ばかり祈りますから、私は知らん顔をしております。しかし毎年四月八日の私の誕生日になると、子供たちが大勢来て、私の頭の上を花で飾って、頭から甘茶をかけてお祝いをしてくれます。私はこんなに親切に可愛がってもらうと、うれしくてうれしくてたまりません。私は欲ばりの大人に拝まれるよりも、こんなに親切な子供達に可愛がられる方がよっぽどうれしゅう御座います」
皆はパチパチと手をたたいて、お釈迦様の演説に感心をしました。
そ
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