と消えてしまって、あとにはただ玉雄と照子と二人だけ残りました……………………と思う間もなく、太陽の光りに照らされた雪の塔は見る見るうちに溶け出して、ユラユラと二三遍動いたと見る間《ま》に、根元からドタドタドタと一度に崩れ落ちてしまいました。
「アッ」
「助けて」
と叫んで玉雄と照子が時々眼をさましますとコハ如何に、二人はあたたかい寝床の中に寝かされて、お父さんとお母さんが心配そうに介抱しておられました。
二人が眼をさましたのを見ると、お父さんとお母さんは一時に二人を抱き締《しめ》て喜ばれました。そうしてこう云われました。
「まあ、お前達はよく助かってくれたね。お前達が帰りが遅いので、お父さんとお母さんはお迎えに行ったけれども、雪が降ってわからない。それから村中の人を頼んで探してもらって、やっと杉林の中で抱き合ってたおれているお前達を見つけたのだよ。私達はお前達が死ぬかと思ってどれ位心配したか」
と云ううちにお母さんは嬉し涙をこぼされました。
その時にお父さんはこう云われました。
「それにしても不思議な事がある。お前達がまだ眼を醒まさないうちに、お前達はさも面白そうに囈語《うわご
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