の次にはイエス様が立ち上って演説をしました。
「私もお釈迦様と同じように誕生日《クリスマス》には子供たちに可愛がられます。しかし困った事には日本の子供は、私の誕生日を祝うことよりも私の家来のサンタクローズにいろいろのものを貰う方を楽しみにするようです。又も一つ困った事には、クリスマスの日には子供より大人の方が夢中になって、クリスマスツリーを飾ったり、クリスマスプレゼントを遣ったり貰ったりしますが、そのためによく子供の方がお留守になって、クリスマスの日になると、『うるさいからあっちへ行っていらっしゃい』なぞと叱られる事があります。私は可哀そうで可哀そうでたまりません。ふだん大人は忙しくてゆっくり子供と遊ばれぬ事が多いのです。しかしクリスマスの日だけは子供の日ですから、大人の人は一生懸命になって子供を喜ばすようにしてやって頂きたいと思います」
皆は又も手を拍《う》って賛成しました。
お釈迦様とイエス様のお話が済むと、七福神が揃って飛び出して「七福踊り」というのを踊りました。これをはじめにして乙姫の「竜宮の舞い」、達磨大師の「コロコロ踊り」、花咲爺の「花咲踊り」、舌切雀の「雀踊り」、桃太郎の「剣舞」、金太郎の「力持ち」、獣《けもの》のダンス、鳥のダンスなぞが次から次へ数限りなく、いつまで見ても面白う御座いました。
その一番おしまいには「へのへのもへし」「山水天狗」「つるまむし」の三人が手を引き合って飛び出して、へのへの踊りというのをやりました。そのうたはこうでした。
「へのへのもへし[#「へのへのもへし」に傍点]につるまむし[#「つるまむし」に傍点]
山水天狗[#「山水天狗」に傍点]の三人は
生まれ故郷は知らねども
かしこやここの白壁や
扉や窓に現われて
誰が描《か》いたと睨まれる
描《か》き散らかしたわるものは
私はちゃんと知っている
けれども云ったら大変だ
だから私はだまってる
描《か》いた坊ちゃん嬢ちゃんは
蔭の方からクスクスクス
赤い舌をペロペロペロ
父さん母さん憤《おこ》り出し
急いで消して終《しま》うけど
またそのうちに私等は
他の処にあらわれる
いくつもいくつもあらわれる
だれも消さないその時は
雨にたたかれ洗われて
次第次第に消えて行く
消えない間のおたのしみ
さあさあ踊らせ歌わんせ
山水天狗[
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