青水仙、赤水仙
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鍬《くわ》で
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その晩|蒲団《ふとん》の中で、
−−
うた子さんは友達に教わって、水仙の根を切り割って、赤い絵の具と青い絵の具を入れて、お庭の隅に埋めておきました。早く芽が出て、赤と青の水仙の花が咲けばいいと、毎日水をやっておりましたが、いつまでも芽が出ません。
ある日、学校から帰ってすぐにお庭に来てみると、大変です。お父様がお庭中をすっかり掘り返して、畠にしておいでになります。そうしてうた子さんを見ると、
「やあ、うた子か。お父さんはうっかりして悪い事をした。お前の大切な水仙を二つとも鍬《くわ》で半分に切ってしまったから、裏の草原《くさはら》へ棄ててしまった。勘弁してくれ。その代り、今度水仙の花が咲く頃になったら、大きな支那水仙を買ってやるから」
とおあやまりになりました。
うた子さんは泣きたいのをやっと我慢して、裏の草原《くさはら》を探しましたが、もう見つかりませんでした。そうしてその晩|蒲団《ふとん》の中で、「支那水仙は要らない。あ
次へ
全4ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング