笑う唖女
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)芽出度《めでた》い
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)消防|頭《がしら》、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ
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「キキキ……ケエケエケエ……キキキキッ」
形容の出来ない奇妙な声が、突然に聞こえて来たので、座敷中皆シンとなった。
それはこの上もない芽出度《めでた》い座敷であった。
甘川《あまかわ》家の奥座敷。十畳と十二畳続きの広間に紋付《もんつき》袴《はかま》の大勢のお客が、酒を飲んでワイワイ云っていた。奇妙な謡曲を謡《うた》う者、流行節を唄い唄い座ったまま躍《おど》り出しているもの……不安とか、不吉とかいう影のミジンも映《さ》していない、醇朴《じゅんぼく》そのもののような田舎《いなか》の人々の集まりであった。それが皆、突然にシンとしてしまったのであった。
「……何じゃったろかい。今の声は……」
「ケダモノじゃろか」
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