てこの船を教えてくれた。フ――ン。君の親孝行に同情して教えてくれた。重慶にお母さんを一人養っている……タッタそれだけの理由かい。本当の事を云ってみたまえ。隠したって駄目だよ。この次に王君に会えばわかるんだ。ナアニ、どこへも聞こえやしないよ。機械の音が八釜《やかま》しいから……ナニイ……何だって……。
ハハハ。ナアル程。そこで王君は大学をやめて、レストランのボーイになれって君に勧めたア?……アッハッハこいつあイヨイヨ傑作だ。二階の婦人専門のサルーンに出れば、最低千円のチップは請合うと云うのか。いかにも読めたわい。王公一目で君のスタイルに参ったんだね。学生にしちゃスマート過ぎるからな。そこで都合よく奥に引っぱり込んだんだ。やっぱり王公は眼が高《たけ》えや。ハハハハ。今度|上海《シャンハイ》へ来たら是非モウ一度寄ってくれって?……ナカナカ執念深いな。……ナニ……今のチップの千円問題は僕に云っちゃいけないって? ハハハ馬鹿にしてやがら。僕の俸給と桁違《けたちが》いだもんだからソンナ事を云うんだ。行き届いた男だが、しかし中華人一流の要らざる心配だよ。まさか僕が雇われに行けあしめえし。ハッハッハ
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