カリ遣り給え。しかし試験の候《そうろう》のっていうけど、今の学校の試験なんか甘いもんだよ。僕が機関長になった時の体験を話したら身の毛が竦《よだ》つだろうよ君等は……まあ聞き給え……モウ船室《ケビン》には用は無いだろう。ナニ、書物を読みたい。書物なんかは大概にしとくがいいね。学校で習った事なんか実際の役に立ちやしないよ。理窟通りに機械が動くもんなら機関長は要らない。学者の思う通りに世の中がなるものなら、ボルセビキの理論は一と通りで済むんだ。ナカナカ学者だろう。ハッハッ。
オイ。ボン州。チョット来い。モウ一パイ茶を入れて来い。今度は紅茶だ。俺のはウイスキーを割って来るんだぞ。それからその扉《ドア》を閉めておけ。八釜《やかま》しいから……。
どうだい。こうして扉《ドア》を閉めとくと機械の音がウッスリしか聞えないだろう。扉《ドア》が厚いからね。しかしコンナに軽い騒音でも、機械のどこかに故障があると、直ぐにこっちの頭にピインと来るんだよ。故障の個所までチャント解るから不思議だろう。ナアニ。永年の経験さ。この部屋で寝ていると夜中に何か知らんハッとして眼を醒ます。ハテ。何で眼を醒ましたのかと思っ
前へ
次へ
全46ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング