ンザアイ……」
と一人が筒抜けの大きな声を出したが、その男が朦朧《もうろう》たる酔眼を瞭《みは》って、両手を高く揚げながら立ち上ろうとすると、真先に私のいるのに気が付いたと見えて、ビックリしたらしく尻餅を突いた。尻の下に敷かれた友人の頭が虚空を掴んでいるのを構わずに、両手で膝頭を突張って、真赤なトロンとした瞳《め》で私のフロック姿を見上げ見下していたが、忽《たちま》ちニヤリと笑いながら唇を舐《な》めまわした。
「ヘヘッ……手品が来やがった」
「何だあ。手品だあ。何処でやってんだ」
「それ。そこに立ってるじゃないか」
「何だあ。貴様が手品屋か。最早《もう》、遅いぞオ。畜生。余興はすんじゃったぞオ」
私は急に不愉快になって逃げ出したくなった。相手の不謹慎が癪に障ったのじゃない。コンナ半間な服装で、こうした処へ飛び込んで来て、棒のように立辣《たちすく》んでいる私自身が情なくて、腹立たしくなって来たのだ。しかし折角ここまで来たものを白鷹氏に会わないまま帰るのも心残りという気もしていた。
「オイ。出来たかい、フィアンセが……」
「ウン。二、三人出来ちゃった」
「二、三人……嘘つきやがれ」
「
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