いか。何だって俺んとこへ、そんなに早く知らせたんだろう」
「だって先生。この間のお手紙に、今度の庚戌会で是非会うって、お約束なすったでしょう」
「ウン。あの手紙を見たのかい」
「あら。見やしませんわ。ですけどね。今度の庚戌会は大会なんでしょう。明治節ですから……」
「ふうん。僕は知らなかったよ」
「あら。この間、案内状が来てたじゃございません」
「知らないよ。見なかったよ。どんな内容だい」
「何でもね。今度の庚戌会は、ちょうど明治節だから久し振りの大会にするから東京市外の病院の方々も参加を申し込んで頂きたいって書いてありましたわ。あの案内状どこへ行ったんでしょう」
「ふうん。そいつは面白そうだね。会費はイクラだい」
「たしか十円と思いましたが……」
「高価《たけ》えなあ」
「オホホ。でも幹事の白鷹先生から、臼杵先生に是非御出席下さいってペン字で添書がして在りましたわ」
「ふうん。行ってみるかな」
「あたし、先生がキットいらっしゃると思いましたからね。それから後お電話で白鷹先生に、今度こそ間違ってはいけませんよって念を押したら、ウン。臼杵君からも手紙が来た。おまけに幹事を引き受けたんだか
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