全額の目録を捧げられた時の、校長先生の平気な、すこし嬉しそうなお顔……。
 それから川村書記さんの事務報告に続いて、校長先生が感謝の演説をなされました。そのお言葉の涙ぐましかったこと……その真情の籠もっていたこと……そのお姿の神々《こうごう》しかったこと……そうして、そうでありましただけ、それだけにその演説の意味が、どんな詩人でも思い付かないくらいに悪魔的でしたこと……。
「私は自分の子というものを一人も持ちません。ですから、いつも皆様を私のホントウの子供と思っております。……この五年の間にお名前から、お顔から、お心持までも一々記憶して、何の疵《きず》もない玉のように清浄に育って行かれる皆様のお姿を、心の底まで刻み付けているのであります。その皆様をこの浪風の荒い、不正不義に満ち満ちた世の中に送り出す、その最後のお別れの日の今日只今、私がどうして平気でおられましょう。どうして感慨なしにおれましょう。それが繊弱《かよわ》い、美しい、優しい皆様でありますだけ、それだけに、雄々しい吾児を戦場に見送る母親の気持よりもモットモット切ない思いで胸が一パイになるのであります。
 ……申すまでもなく人生
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