それはこの世に又とない校長先生の悪徳を、眼も眩《くら》むほど美しく、上品に飾り立てた芝居だったのですから。それは私以外の人達が一人も気付いてお出でにならない……そうして同時にタッタ一人私だけを苛責《いじ》め、威かすために執行《とりおこな》われた、世にも恐ろしい、長たらしい拷問《ごうもん》だったのですから……。
 最初に全校の生徒の「君が代」の合唱がありましたが、その純真な、荘厳この上もない音律《リズム》の波を耳に致しておりますうちから私は、もう身体中がゾクゾクして、いても立ってもおられないくらい空恐ろしい、今にも逃げ出したいような気持になってしまいました。……心のドン底から震え上らずにはおられない……「君が代の拷問」……。
 それからその次に、父兄代表として視学官の殿宮さんが壇上にお立ちになった時の演説のお立派でしたこと。校長先生の御高徳を、極《ご》く極く詰まらない事までも一つ一つ挙げて、説明して行かれた時の満場の厳粛でしたこと……。
 校長先生の銅像の寄付金の事に就いて、教頭の小早川先生が報告をなすった後に、卒業生代表の殿宮アイ子さん……まだ何も御存じないアイ子さんが、集まったお金の
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