事件の黒幕的人物に非ずやと疑いおりし人々も、ここに於て推定の根拠を失いたる訳にて、そのいずれが真なるやを考察するは全然不可能なるものの如く、関係当事者一同は又もや五里霧中に放り出された状態に陥っている。

   意外! 黒焦犯人は[#「意外! 黒焦犯人は」は2段階大きな文字]
    県視学の令嬢?[#「県視学の令嬢?」は2段階大きな文字]
       母と共に行方を晦ます[#「母と共に行方を晦ます」は1段階大きな文字]
       父視学官は引責覚悟

 昨報、市内海岸通、天主教会内の帽子|花簪《はなかんざし》事件以来、警察当局にては既報ミス黒焦事件に対する有力なる探査のヒントを得たるらしく、当時、最初に同教会内に入来りたる某女こと、殿宮《とのみや》アイ子(十九)という少女を同教会内別室に伴い、厳重なる取調を行いたる模様なるが、右取調続行の都合上、同午後三時頃、前記アイ子に一応帰宅を許したるに、同女は大胆にも厳重なる監視の目を潜《くぐ》りつつ、重病に臥《ふ》しおりたる母親を伴い、一通の遺書ようのものを同女の父、殿宮愛四郎氏宛に残して、何処《いずく》へか姿を晦《くら》ましてしまった
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