何でもこの前に貴女にお手紙書いてから間もなくの事よ。いつもの通り新高さんと妾のバッテリでシボレーに乗って、博多から折尾へ行く途中十時半チョット前と思う頃、香椎の踏切にかかったの。ヒドイ吹き降りで一人もお客のない晩だったわ。二百二十日か二十一日の晩でしたからね。
 踏切にかかる少し前で、左側の松と百姓家の間から上り列車の長い長いアカリがグングン走って来るのが見えたんですけど、妾は平気で、
「……汽車アオーラアーイ」
 って長く引っぱって叫んだようよ。
 なぜソンナに恐ろしい嘘言《うそ》をついたのか、その時の気持がどうしてもわからないんですけど、真暗な雨風の中をすごいスピードで走る自動車の中で、すっかり憂鬱になっていた妾が、新高さんと一緒に死んだ方がいいような気持になっていたせいでしょう。
 その列車は熊本とか鹿児島とかから出た臨時列車で、満州に行く団体の人を一パイに乗せていたんですって。ちょうど博多発、上り十時一分の終列車が通り過ぎたばかりの処でしたから、十一時の下り列車ばかりを用心していた新高さんは、妾の言う事を本当にしたんでしょう。思い切りスピードを出して踏切を突切って国道沿いに右手
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