何の音沙汰もなく、病院の方も以前の通りの繁昌を続けている。

 それでも彼女の名前を当てにして病院に尋ねて来る患者は、まだなかなか尽《つ》きない。私の病院は彼女のために存在していたのじゃないか知らんと疑われるくらいである。
 一方にその後、警官や刑事諸君が遊びに来ての話によると、彼女は向家《むかい》の蕎麦屋《そばや》にいる活弁上りの出前持を使って電話をかけさせておったものだそうで、白鷹助教授に化けて東京から電話をかけたのもその弁公だったそうである。文句は彼女がスッカリ便箋に書いて、弁公を病院の地下室に呼び込んで、何度も何度も練習させたものだそうでまた、白鷹氏の手紙も、彼女が文案をして県庁前の代書人に書かせて投凾したものだと言う事が、彼女の白状によって判明していたと言うが、そんな話を聞けば聞くほど、彼女の虚構《うそ》の創作能力と、その舞台監督的な能力が、尋常一様のものでなかった。虚構の構成に関する、あらゆる専門的……もしくは病的な知識と趣味とを彼女は持っていた。如何なる悪党、または如何なる芸術家も及ばない天才的な、自由自在な、可憐な、同時に斃《たお》れて止まぬ意気組を以て、冷厳、酷烈な現
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