んですってさあ。亜米利加の男や女に独身生活者《ひとりもの》が多いのは、そんな遊びのステキな気持ちよさを知っているからで、そんな人達に、方々から誘拐《かどわか》して来た、美しい男や女を当てがって、いろんなステキな遊びをさせる倶楽部《くらぶ》だの、ホテルだのいうものが、大きな街に行くとキットどこかに在るんですってさあ……つまりお金さえあれば、ドンナ事でも出来るのが亜米利加の風《ふう》だっていうのよ。だから恋愛の天国っていえば、今の世界中で亜米利加よりほかに無いってヤングは自慢していたわ。
 ……でもね……その中でたった一つ、ドンナお金持ちでも滅多に出来ない、一番ステキな、一番贅沢な、取っときの遊びがあるっていうのよ。ねえ……面白いでしょう……それはねえ。今云ったようにお金ずくで出来るいろんな素敵な遊びにも飽きてしまって、どうにもこうにも仕様《しよう》がなくなった人の中の一人か二人かがやって見たくなるステキなステキな、この上もない無鉄砲な遊びで、それこそホントにお金ずくでは出来ない生命《いのち》がけの愉快な遊びなんですってさあ……そう云ったらあんたはわかるでしょう。その遊び方が……え……わか
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