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ポオの中でもモルグ街とかマリーロージエとかいう推理専門みたようなのは好かない。読みかけてみたことはあるが、途中でウンザリして屁古垂《へこた》れてしまう。どうも本格の探偵小説は私の性に合わないらしい。もちろん本格ものを書いてみたいと思わないことはないが、それでも読んでくれるのは自分だけみたいな気がしてじきに筆を投げたくなるから困る。
私があくがれているのは探偵趣味で、探偵味ではないらしい。私だけの場合かも知れぬが、本格ものは読んでいると音楽趣味を理解するためにピアノの組立方とその学理を説明されてるような気がする。又本格ものを書いていると、やはりピアノの組立方を研究しているような気もちになって味気なくてしようがない。その組立てるのが面白いのだと云う人があればソレ迄だが、私は元来ピアノそのものには面白味も感じない性分である。多少音階が違っていても、音が悪くても構わない。それを弾じている人の腕前と、その腕から出て来る音律に興味を持つようである。
こうした主張と比喩には大きな間違いがあるかも知れないが、私の気持ちは、こんな風に説明するのが一番近いような気がする。
こうした私の気持を百
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