きをしていましたから」
と言いました。お父さんもお母さんも大層お笑いになって、
「そんな事はない。犬は逃げたかも知れないが、人形は押入れに仕舞ってあったのだから、きっと焼けてしまったに違いない。もうしかたがないから二人ともおとなしく遊ぶのですよ。そうしたら今に又いい犬といいお人形を買って上げるから」
と言われました。
二人は悲しくなってシクシク泣き出しましたが、やがて花子さんはばあやのお庭の隅に、「メリーさんのお墓」と書いた木の札を立ててコスモスやケイトーの花を上げて拝みました。太郎さんは、
「ポチが生きていればメリーチャンもきっと焼けないでいるよ。まだよくわからないのだからお墓を建てるのおよしよ」
と止めましたが、花子さんはただシクシク泣いて拝んでいました。
火事がすっかり済んでから、お父様は一人でお家の焼けあとを見にいらっしゃいましたが、夕方になると急いで帰って来て、
「うちはたった一軒焼け残っていた。さあみんな来い」
と大喜びで、ばあやも連れて東京のおうちへお帰りになりました。
おうちに来ると花子さんは何より先に押入れをあけて人形を見つけますと、抱き締めて飛んでよろ
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