愛子は最初、大深に初恋を感じていたのを自分でも気付かずにいたんだ。それがあの手紙を見て焦《こ》げ付くほど燃え上った。そうして大深の死刑と一緒にこの世が暗闇《くらやみ》になった。
 ふうん。恐ろしい間《ま》だるっこい惚れ方をしたもんじゃないか。惚れていた事がわかるまでに人間を二人も殺してさあ。
 ふうん。ほんとうに純真な、内気な女なんてソンナもんだ、そこがこの話のスゴイところだ……小説になるところだっていうのかね。
 アハハ。成る程ねえ……。



底本:「夢野久作全集10」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年10月22日第1刷発行
入力:柴田卓治
校正:ちはる
2000年12月18日公開
2006年2月23日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全26ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング