学校へ行ったので御座いましたが、そのうちにいつからともなく不思議と病気が癒《なお》ってしまったので御座います。これはおおかたお兄様に是非とも一度お目にかからなければなりませぬ運命を、私が持っておりましたせいでしょうと思いますけれども……。
 けれども、その時の私は何故この病気も癒ったのだろうと、つくづく天道様《てんとうさま》を怨《うら》んだことで御座いました。
 それから後《のち》の私は「不義者の子」という大きな札をホントに間違いなくピッタリと貼りつけられたように思って仕舞ったので御座います。日の目を見ることさえも恥かしく思いながらその日その日を送っていたので御座います。
「ああお母様。あなたは私を助けたいばっかりに、あんな嘘を仰言った」
 とそう思いながら涙にくれた事が幾度ありましたでしょう。中村とか、菱田とかいう文字を見かけますたんびに、私の弱い心はどんなにかハラハラと波打ちましたことでしょう。ほんとに失礼この上もない事ですけど、そのような文字が眼に這入りますたんびに私はすぐに「不義」という文字を思い出すので御座いました。時折りは、いつかしらず歌舞伎座の方を向いて歩いておりますのに
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