っておりますこと。その阿古屋をおつとめになるのが私と同じ年で今年十七におなりになったばかりの中村半次郎|丈《じょう》……外《ほか》ならぬ貴方様で、そんなにお若くて立女形《たておやま》になられた俳優のお話は昔から一つも伝わっていないこと。そのお衣裳の重さが十三貫目もあるのを、そんなお若さで自由にお使いになるのが又、大変な評判になっていること。そうして此度《こんど》の歌舞伎座の興行は昨年の春お亡くなりになった貴方様のお父様、中村珊玉様のお追善《ついぜん》のためであったこと……なぞでございました。
私はその時に御飯を何杯頂きましたか、それとも一杯しか頂きませんでしたか、すこしもおぼえていないので御座います。ただ夢心地で岡沢先生御夫婦のお給仕をしながら外の事ばかり考えておりましたようです。
岡沢先生は「ウッカリして私に歌舞伎座を見せるのを忘れていた」と云われましたが、ホントウは私こそウッカリしておりましたので、何のために柴忠さんの処からお暇《いとま》を頂きましたか、そうして何の目的で東京に参りましたのか。その時までスッカリ忘れていたでは御座いませんか。そうしてウカウカと致しておりますうちに
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