私はこうした運命の手に抱《いだ》かれて、貴方様のお傍に参りましょう。そうしてお懐かしいお胸に縋《すが》って、今までの事をスッカリお打ち明けして、心ゆくまで泣かして頂きましょう。
それが私のホントの運命なのでしょう。
こんなような、七八《ななや》つの子供が夢みますような、甘えた、安らかな気持ちになりまして、うつつともなくウトウトしながら上りの汽車に乗ったことで御座いました。
東京へ帰りつきますと、わざと、場末の名もないような小さな宿屋に泊りました。そうして前にも申上げましたように、そこであれから後《のち》の新聞を読んだので御座いますが、その記事の中でも、とりわけて身を責められました貴方様の御親切の程……それは私の肉体と心につき纏うております世にも恐ろしい、不思議な秘密のすべてを露《あら》わにしてお眼にかけましても、後《あと》へはお退《ひ》きになりそうに思われませぬお心のほどと、そのために急に重くおなり遊ばした御病気の事を承知致しますと同時に、あなた様と私との運命を支配致しております、あの押絵の神秘の力を、どのように空恐ろしく思い知りましたことでしょう。どのようにその新聞紙を抱《い
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