来やがったな。馬鹿野郎共。今度はあべこべに生命《いのち》を取ってやるぞ。その前にこれでも喰らえ」
と云いながら、お尻を出してたたいて見せた。
「それ」
と云って三人が弓に矢を番《つが》えると、小僧は早くも身をかわして、子供達が隠れているのと反対の森に駈け込んで、木の頂上に逆立《さかだち》をしたり、逆様《さかさま》にブラ下ったりして見せた。そしてだんだん三人を森の奥深く誘い込んで行った。三人の悪者はドンドン追っかけて行ったが、その中の一人はあまり上ばかり見ていたので、うっかりして熊蜂《くまんばち》の巣に足を踏み込んだ。驚いて飛び退《の》くと、そのあとから何千何万とも知れぬ熊蜂が一度に鬨《どっ》と飛び出して、三人の悪者に飛びかかって、滅茶滅茶に刺して刺して刺し殺してしまった。悪者共が死んでしまうと、小僧は悠々と樹の上から降りて来て、
「ヤア、熊蜂共。御苦労御苦労。さあ、約束の通り御褒美を遣るぞ」
と云って、砂糖の包《つつみ》を投げてやった。熊蜂共はブンブンと喜んで、
「これさえ下されば、私共は生命《いのち》も何も要りません」
と土に這い付いてお礼を云った。
六
前へ
次へ
全14ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング