いるんですからね……青木院長が請合いますよ。ハッハッハ」
「どうも……ありがとう」
「ところがですね……その義足が出来て来ると、まだまだ気色のわりい事が、いくらでもオッ始まるんですよ。こいつは経験の無い人に話してもホントにしませんがね。大連みたような寒い処に居ると、義足に霜やけがするんです。ハハハハハ。イヤ……したように思うんですがね。……とにかく義足の指の先あたりが、ムズムズして痒《かゆ》くてたまらなくなるんです。ですから義足のそこん処を、足袋《たび》の上から揉《も》んだり掻いたりしてやると、それがチャント治るのです。夜なぞは外《はず》した義足を、煖房《ペーチカ》の這入った壁に立てかけて寝るんですが、大雪の降る前なぞは、その義足の爪先や、膝っ小僧の節々がズキズキするのが、一|間《けん》も離れた寝台の上に寝ている、こっちの神経にハッキリと感じて来るんです。気色の悪い話ですが、よくそれで眼を覚《さ》まさせられますので……とうとうたまらなくなって、夜中に起き上って、御苦労様に義足をはめ込んで、そこいらと思う処へ湯タンポを入れたりしてやると、綺麗に治ってしまいましてね。いつの間にか眠ってしま
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