察の手にお渡ししたいために、生命《いのち》がけでお待ちしておりましたのです。嬢次様の讐討《あだう》ちのために……。そうして嬢次様御一家の限りもない愛国心のために……。
 ……貴方はそうした妾の心がおわかりになったのでございましょう。
 ……日本で罪をお作りになりますと、亜米利加のように自由自在にお逃げになる事が出来ないのでございますからね。たとい貴方が妾をお撃ちになって、その拳銃《レボルバ》にわたくしの指紋を附けて、足跡を消しておいでになったとしても、間もなく狭山様がお帰りになって、その銃口の磨《す》れた、新しい拳銃《レボルバ》を御覧になれば、すぐに貴方だという事をお察しになって、貴方のお靴の踵《かかと》が、まだ日本の土を離れないうちにお捕えになる事が解り切っておりますからね。狭山様のお眼には世界中が硝子《ガラス》のように透きとおって見えているのですからね。
 ……万に一つ……それでも貴方が狭山様に見逃しておもらいになるような事がありましても、死んだ妾達四人の怨みだけはお逃れになる事が出来ないのでございますよ。貴方は今日妾が申し上げた事を死ぬが死ぬまでお忘れになる事が出来ないのですよ。
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