るが、錠剤にして馬に与えるときっかり二十分位で気が荒くなって、狂人《きちがい》のようになって暴れ出す。その代り精製してあるのだから副作用や何かはちっとも起さずに十分か十五分位であっさりと鎮まってしまうので、これはワザワザ陸軍の廃馬を使って実験したものだから間違いはない。
 こうして都合よく誰にも見付からずに……見付かったら騎兵大佐の名刺を出して胡麻化《ごまか》すつもりであった……三十一頭の馬全部に、手早く錠剤を与えてしまうと、折柄、場内に哄《どっ》と大きな笑い声が起った。これは「大馬と小犬」の演技が初まっているので、この演技は、主役の支那人がなかなか上手《じょうず》だから、長くて四十分、短くて二十分以上は請合《うけあい》かかると嬢次少年は云った。その途中でこの厩の馬が一度に暴れ出す。……楽屋の者が総出で取り鎮めに来る。その隙に姿を換えた少年は、荷物部屋の奥に飛び込んでGEORGE《ジョージ》・CRAY《クレイ》と書いた真鍮張りのトランクを開いて、中にある黒い鞄を取り出して逃げるという計画である。
 持主が自分の品物を持って行き易いように手伝ってやるのだから泥棒ではない。しかしこの行為の
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