かし演技場内から楽屋へ行く通路の近所にはいつも一人か二人の団員が居ない事はないからうっかり這入れば直ぐに咎《とが》められるにきまっている。
私は改札口に来て係りの女にちょっと用足しに出たいからと云ったら、女は返事をしないで直ぐ傍に腰をかけて、切符を勘定している小柄な、痩せこけた西洋人を見上げた。その男の耳は、よく進化論や遺伝学の書物の挿し絵に出て来るつんと尖《と》んがった動物耳で、見るからに無鉄砲な、冷血な性格をあらわしていたが、その恐ろしく高い鼻の左右から、青い眼をギョロギョロさして私を見ると、黙って……よろしい……という風に頷《うなず》いたまま、又一心に切符を勘定し初めた。その時にそこいらに立っていた二三人の丁稚《でっち》風の子供が、その西洋人と絵看板を見比べて、
「スタチオだ……スタチオだ……」
と囁《ささや》き合ったので、私はモウ一度振り返ってその横顔を記憶に止めると、何かしらヒヤリとしながら、大急ぎで人混みに紛れ込んだ。ちょっと虎口《ここう》を逃れたような気持ちになって……。
それから大きな天幕《テント》張りを故意《わざ》と遠い方にぐるりとまわって、東京駅の見える裏通り
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