が一種の清らかな、侵し難い気品に包まれている。しかもこの気品は後天的な修養で得られるものではないので、事によるとこの少女は、欧洲のどこかの貴族の出ではあるまいかと疑った位である。いずれにしてもこの曲馬団の花として露西亜趣味の荒っぽい演技の中《うち》に嬢の姿を加えたのは、取り合わせからいっても大成功と云わねばならぬ。満都の人々が嬢の姿を見るためにかように熱狂して集まって来るのも無理はない。
嬢を加えた演技は疾《とっ》くに再開されていたが、私はただ、喝采の声を耳にするばかりで、レンズに限られた範囲しか見ていなかったから、何をやっているかよく解らなかった。
眼鏡の中には嬢を初め他の四名の顔が交《かわ》る代《がわ》る現われた。皆汗を掻いていた。ナイン嬢の耳の附け根にある黒い黒子《ほくろ》が、汗で白粉《おしろい》を洗われたらしくハッキリと見えて来た。色の黒い、逞しい鬚武者《ひげむしゃ》の巨漢《おおおとこ》の髪毛は、海藻のように額に粘り付いている。今一人の若い男は、あまり固いカラを着けているために、首の周囲が擦れて輪の形に赤くなっている。その中《うち》に五人は槍を投げ棄てて、外套を脱いだ。下は
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