いのであります。
伜の嬢次がコンドルに誘拐されましたのは四歳の時だったそうでありますが、その容貌はもとより皮膚の色から、髪毛《かみげ》の生え際に至るまで妻と生き写しでありまして、少し大きくなりましてからは声までも妻の声と間違いましたそうで、ただ耳だけが小生のと同じ恰好をしていた事を記憶しております。今はどれ位の背丈になっておりますか存じませぬが、ちょうど十五歳になっております訳で、小生が只今|宿酔《しゅくすい》から醒めまして、死期の近い事を覚悟致しております気持ちの、異様に澄み切った遥か遥か彼方に、その嬢次の姿が立っておりまして、まだ見ぬ父母を恋い慕いつつ、日本の空をあこがれております心が、ハッキリと感じられておるのであります。
けれども、それと同時に彼《か》の恐るべき禿鷲《コンドル》の爪が、その愛児嬢次を虚空に掴みつつ、日本に飛んで来まして、その恐ろしい翼で、妻ノブ子を羽搏《はう》とうとしている事実がありありと感じられておるのであります。聞くところに依ればコンドルは目下東部|亜米利加《アメリカ》に於て、欧洲各国からアブレて参りました曲馬師連を集め、部下の中《うち》でもこの方面に心
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