た。又、或る夜は、家《うち》の裏庭に積んでありました秣《まぐさ》から発火して、住宅を焼き払ってしまいましたが、その時も、偶然に来合わせたコンドルと、桑港《サンフランシスコ》から雉猟《きじりょう》に来ておりました藤波(この遺書の保管者にて小生の旧友)氏の御蔭《おかげ》で、煙の中に打ち倒れている妻子が救わるる事に相成りました。しかもノブ子はこのために一時病気となり、加うるに資金欠乏のために当座の仕事を中止せねばならぬ破目《はめ》に陥りましたが、コンドルはこの時も前と同様に親切に妻の世話を致しまして、巨額の金を貸し与え、仕事が続くようにしてくれました。そのような金をコンドルがどこから持って来たものか、私は今以て怪訝《けげん》に堪えませぬが、そのような事は気付かぬながらに、妻ノブ子は友人として衷心からの感謝をコンドルに捧げておりましただけで、小生の妻たる一事は決して忘れておりませんでした。
 以上の出来事が全部コンドルの策略であった事は申す迄もありませぬ。(但し、藤波氏は全然無関係)コンドルは斯《か》くして小生の妻に佯《いつわ》りの親切を尽す一方、機会ある毎《ごと》に小生の放蕩無頼な生活を聞き
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