させるために、帝国ホテルで待ち構えておいでになったのでしょうと存じます。
……帝国ホテルにはJ・I・Cの人はもう一人も居ない筈でございますから……。
……その証拠はここにあるこの号外でございます。この号外はもう一時間半ばかり前、貴方がこの家にお着きになる前に配って来たものですから、東京市中には残らず行き渡っているでございましょう。貴方は今日の三時過ぎからお忙しかったために、この号外をまだ御覧にならなかったのでしょう。貴方にこの号外を通知する人が、一人残らず警視庁に挙げられたせいでもございましょうけど……」
女の言葉はいよいよ出でて、いよいよ励《はげ》しくなって行った。窓の外で聞いている私でさえも真偽の程を疑わずにはいられない事実……眼を※[#「※」は「目+爭」、第3水準1−88−85、333−5]《みは》り、息を喘《はず》ませずにはいられない恐ろしい大変事を、平気ですらすらと述べて行く……その物凄い光景に肌を粟立たせずにはいられない位であった。
況《ま》してゴンクール氏は全力を尽して女の言葉を遮ろうとしているように見えた。白い銃口を上下にわななかせながら、眼を固く閉じて女の姿を見まいとした。歯をギリギリと噛み締めて女の声を聞くまいとした。両手の拳を砕けよと握り締めて、一発の下に女の息の根を止めようと努力し又、努力した。最後には両脚を棒のように踏み締めて死にかかった獅子のようにぶるぶると身をもだえた。けれどもどうしてもその弾倉撥条《バネ》を握り締める力が出ないらしかった。
その間に懐中から取り出した一枚の四半頁大の号外の折り目を丁寧に拡げ終った女は、もう一度眼の前にわななく銃口を見ながら、ひややかに笑った。
「……ホホホホホホホ。ゴンクール様。貴方はどうしてもその引き金をお引きになる力がおありにならないのですね。
……御尤でございます。
……そのわけは、よく存じております。
貴方はまだ日本の法律に触れておいでになりません。日本人にとって一番憎らしいお方でありながら、日本の法律ではまだ貴方を罰する事が出来ません。けれども万一|妾《わたし》をお撃ちになったらその時から貴方は罪人におなりになるのですからね……。私は貴方にそうして頂きたいために、この室《へや》でお待ちしていたのです。貴方の仲よしの××大使様でも、指一本おさしになる事が出来ないようにして貴方を警
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