敵であるかのように、油断なく身を構えながら……時計……油絵……骸骨、電燈……と順々に見まわして行ったが、それにしてもまだ、腑に落ちない事が余りに多いので、半信半疑の心理状態に陥ったものであろう。次第に血色を回復しながらも不安そうに女を見下した。威嚇するように重々しく口を啓《ひら》いた。
「……それでは……この家はミスタ・サヤマの家《うち》ではないのですか」
「……いいえ。叔父の家《うち》に間違いございませぬ」
「……ふむ。それでは……」
とストーン氏はもう一度ぐるりと室《へや》の中を見まわした。
「ジョージ・クレイはどこに居るのですか」
「今しがたお答え致しました」
「え……何と云いました」
「お忘れになりましたか。嬢次はお母様と一緒に天国に……」
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッ……」
とストーン氏は女の言葉を半分聞かぬうちに、突然、取って付けたように高らかに笑い出した。しかもそれは今の女の言葉に依って、何事か或る重大な疑問が解けたために、今までの不安と、緊張から一時に解放された事を証拠立てるところの、どん底までも朗かな、痛快な、ヤンキー式の感覚を投げ出した笑いであった。椅子に反《そ》り返って、両脚を投げ出して、ハンカチで顔を拭いて自分の前に坐っている女と、窓の外に立っている私を茫然たらしむべく、室《へや》中をゆすり動かして笑う笑い声であった。
「アッハッハッハッハッ……天国…………天国……天国へ行きました……アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」
そう笑い続けているうちに気を取り直して、旧《もと》の通りの紳士に立ち帰ろうとして、眼の前の女の姿を見ると、又もたまらなさそうに笑いを押え付けるストーン氏であった。
「ええへ。ええへ。ああは。はは。ほほ。ふむ。ふむ。……御免なさい……ああはは。ほうほ。ふむ。ふむ。えっへ。御免なさい……私は……わ……わらい……ました。失礼しました。済みませんでした。私は貴女《あなた》が本当に欺されておいでになるから……笑いました。お気の毒でした。どうぞ……どうぞお許し下さい」
やっと笑いを納めたストーン氏はハンカチでもう一度顔を拭きながら女を見た。しかし女は依然として淑《しと》やかな態度を保っていた。笑われれば笑わるるほど落ち着く性質の女であるかのように見えた。そうしてこの上もなく無邪気な眼付きでストーン氏のピカピカ光る
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