。もう存じておる筈ですから……でなくとも、もう直《じ》きに解りますから……」
「叱られるでしょう」
「叱りませぬ。泣いてくれますでしょう」
「何故ですか」
「あとからお話し致します」
「……フム……それでは……学校を卒業してから何をしておられましたか」
「絵と音楽のお稽古をしておりました」
ストーン氏は背後《うしろ》の絵を振りかえった。
「……S・AOYAMA……この絵は貴女《あなた》の絵ですか」
「……いいえ……わたくしの先生……」
と云いさしてハッとハンカチで口を蔽うた。ストーン氏はニヤリとしながら頤《あご》で首肯《うなず》いた。
「……フム……それで……貴女《あなた》はいつ、初めてジョージ・クレイに会いましたか」
「今から一週間前の朝でございました」
「どこで……どうして友達になりましたか」
「それも申上げる訳に参りませぬ」
ストーン氏は又も不愉快な顔をした。又か……という風に……。
「フム……それではその時にジョージは一人でしたか」
「ハイ……ですけどもその時にジョージ様は云われました。私は曲馬団の中で一人の露西亜《ロシア》人と、伊太利《イタリー》人の兄弟との三人に疑われているから、あまり長く会ってはいられない……」
「フム……貴女《あなた》はジョージを見たのはその時に初めてでしたか」
「ハイ、いいえ。新聞の広告や何かで、お名前だけは、よく存じておりましたけど……」
「……それでは貴女《あなた》が初めて会った時にジョージの名前を聞いたのですね」
「……………」
女は返事しなかった。ただ頭を左右に振っただけであった。[#底本では句点なし]
「フーム……それでは……貴女《あなた》は名前を知らないでジョージと会ったのですね」
「……………」
女は微かにうなずいた。
「そうして仲よくなったのですね」
「……………」
「わかりました。そうして初めて会ってからどこへ行きましたか」
「それも申上げる訳に参りませぬ」
「それから後《のち》会った処も……」
「ハイ……」
「……フム……それでは後から尋ねます。……それからジョージは貴女《あなた》の叔父様……ミスタ・サヤマの事知っておりましたか」
「初めは御存じなかったようです。ですけど私が叔父の名前を申しましたら吃驚《びっくり》なさいました」
「その時ジョージは何と云いました」
「嬢次様は大層喜んで、狭山の名前は亜米
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