。しかもその女はたしかに今私の留守宅に忍び込んで、容易ならぬ仕事をたくらんでいるに違いない事を私の第六感が指し示しているではないか。
 畜生……どうするか見ろ……。外道《げどう》……悪魔……売国奴の群れ……。
 こう思いながら私は自動車に飛び乗ったのであった。
 見す見す彼等の手に乗って、死の運命に引きずり込まれて行くのを自覚しながら……。もう欺されぬぞ。貴様等は俺を見損っているぞ……という自信を固めながら……。
 そんな事を考えながら、新しい、気持ちのいいクッションに身を埋めて、汗ばんだ額を拭こうとすると、その拍子にポケットの中から紫のハンカチと、中に包まった古新聞紙を引きずり出してしまった。それは最前私が結び目を解いたままポケットに押し込んでいたので、ポケットから出すと同時にバラバラになって、フロアの上に落ちて行った。それを慌てて拾い上げようとすると、新聞紙の間から白いカード見たようなものが飛び出しているようである。……おや。何だろう……と思って取り上げて見ると、それは五枚の絵葉書であった。私はすぐに運転手に呼びかけて車内照明《ルーム》を点《つ》けさせた。
 その絵葉書は五枚とも舶来の光沢写真で、材料といい、技術といい、大正十年前後の日本では容易に見られない見事なものであった。写真は五枚とも同じもので真中には風采の堂々とした純ヤンキーらしい鬚のない男が、フロックコートを着て、胸に一輪の薔薇《ばら》の花を挿して、両手を背後《うしろ》に組んだまま莞爾《にこ》やかに立っている。その左側にスカートの短い、白い乗馬服を着て白い帽子を冠《かぶ》って、短い鞭を持って立っているのは最前のカルロ・ナイン嬢で、これもこっちを覗き込むようにして無邪気な微笑を含んでいる。又右手には嬢次少年が、真面目な顔をしてじっと正面を見ながら立っているが、服装はモーニング式の乗馬服で、右手《めて》に山高帽を持ち左手《ゆんで》に手袋と鞭を握り締めている。
 三人の背後《うしろ》には一羽の大きな禿鷹が羽根を拡げた図案を刺繍《ししゅう》した幕が垂らしてあって、その上にB・S・A・Gという四個の花文字がこれも金糸か何かの刺繍になっているが、この幕は最前曲馬場の穹窿《きゅうりゅう》から垂らしてあった大旗と同じ図案であろう。三人の足の下に書いてある名前を見ると、真中のはバード・ストーンとある。なる程団長だけあっ
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