時教会の入口の扉《ドア》をノックする音が聞えた。そうしてどこかで聞いたような錆《さ》びのある声が洩れ込んで来た。
「這入ってもよろしゅうございますか」
「よし這入れ」
と云うと声に応じて扉《ドア》が開いた。それは最前の運転手で、内部の物々しい、静かな光景を見てちょっと臆したようであったが、直ぐにつかつかと近寄って来て、ひょっくりとお辞儀をしながら一通の手紙を差出した。
「こんなものが門の中にありました」
「門の中のどこに!」
と私は受取りながら訊ねた。
「……扉《ドア》の内側に挟んでありましたのが、風で閉まる拍子に私の足下へ落ちましたので、多分旦那方の中《うち》においでになるんだろうと思いましたから……」
「よしよし。わかった。貴様は表へ出て待ってろ」
「いや。一寸待て」
と志免警部が横から呼び止めた。運転手はぎくりとしたようにふり返った。
「へ……へい……」
「最前貴様がここへ来た時には、日本人や外国人取り交《ま》ぜて五六名の者がたしかに居たんだな」
「へい。それはもう間違いございません。私がこの眼で見たので……」
「よし……行け……」
と志免警部は噛んで吐き出すように云った。そうして私が封を切って読みかけている手紙を熱海検事と二人で覗き込んだ。
その手紙は記念のために、まだここに持っているが、白い西洋封筒の上に鉛筆の走り書きで、
警視庁第一捜索課長
狭山九郎太様 御許に[#「御許に」は小文字]
志村のぶ子 拝[#地付き、地より5字アキ]
と認《したた》めてある。中の手紙はタイプライター用紙六枚に行を詰めて叩いた英文で、よほど急いだものらしく、誤植や誤字がちょいちょい混っている。飜訳すると原文よりは少々長くなるようであるが、あらかたこんな意味である。
取り急ぎますままに乱文の程お許し下さいませ。
妾《わたし》は只今、貴方様の神速な御探索を受けております事を承知致しまして、とても助かりませぬ事と覚悟致してはおりますが、万に一つにも、お眼こぼしが叶いました節は、生きて再びお眼もじ致します時機がないように存じ上げますから、勝手ながら、妾の一生のお願い事をお訴え申上げたく、不躾《ぶしつけ》ながら手慣れておりますタイプライターの英文にて御意を得させて頂きます。
その中《うち》にも何より先立ってお許しの程をお願い申上げとう
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