驪s殺の楽しみ以外の何ものでもなかった。彼は戦争に勝つ毎《ごと》に、宮殿の壁や廊下を数万の敵兵の新しい虐殺屍体で飾りその中で敵国の妃や王女を初め、数千の女性の悲鳴を聞いて楽しんだ。そこにダリオスは世界最高の悪魔的文明を感じたのであった。
……亜歴山《アレキサンドル》大王はアラビヤ人を亡ぼすために、黒死病患者の屍体を荷《かつ》いだ人夫を連れて行って、メッカの町の辻々でその人夫を一人ずつ斬倒《きりた》おさせた。これはその極端な悪魔的な精神に於て、近代の戦争のやり口をリードしているのみならず、遥かにソンナものを超越した偉いところがあった。流石《さすが》は大王というよりほかなかったものである。
……露西亜の彼得《ペートル》大帝は、和蘭《オランダ》に行って造船術を習ったと歴史に書いてあるが、これは真赤な偽りで、実際は堕胎術と、毒薬の製法を研究に行ったのだ。彼得《ペートル》大帝は、そうして得た魔力でもって露西亜の宮廷を支配して、あれだけの勢力を得たもので、大帝の属するスラブ人種が、六十幾つの人種を統一して、大露西亜帝国を作ったのも、こうした大帝から魔力を授かったスラブ族の科学智識のお蔭でしかないのだ。
……こんな調子で世界を支配するものは神様でなくてイツモ悪魔であった。一切の科学の初まりは神様の存在を否定し、人間をその良心から解放するのが目的で、同時に一切の化学の初まりは錬金術であり、一切の医術の初まりは堕胎術と毒薬の研究でしかなかったのである。
……吾々は歴史に欺《あざ》むかれてはならない。常に悪魔的な正しい目で歴史を読んで行かないと飛んでもない間違いに陥ることがある。元来ユダヤ人というものは人類の全部をナマケモノにしてコッソリと亡ぼしてしまって、ユダヤ人だけで世界を占領してしまおうと思って、昔から心掛けて来た人種だ。骰子《さいころ》だのルーレットだのトランプだの将棋だのドミノだのいうものは、そんな目的のために猶太《ユダヤ》人が考え出して世界中に教え拡めたものである。しかもその猶太人が、そんな目的のために発明して世界中に宣伝しようとこころみた最後のものがこの基督《キリスト》教なのだから、呆れてモノが云えないではないか。
……「この世の中の事は何もかも神様の思召《おぼしめし》ばかりだ。神様に祈ってさえいれば、欲しいものは何でも下さるのだから、人間はチットモ働かなくてい
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