ッとさせられた位だからね……」
「……それは……そう……ですねえ……」
「そうだろう。その第六番目の乾物みたような姿のあとに、今一つ白骨の絵か何かを描《か》き添えたら、それでモウ充分にその絵巻物は完成していると云っていい。そうして残った白い処へ諫言《かんげん》の文だの、苦心談だのを書いて献上しておいて、自分はあとで自殺でもすれば、気の弱い文化天子の胆《きも》っ玉《たま》をデングリ返らせる効果は十分、十二分であったろうものを、そうしないで、なおも飽く事を知らずに、必要もない新しい犠牲を求めて歩いたのは何故か……黛夫人の遺骸が白骨になり終るのを、温和《おとな》しく待っておりさえすれば、何の苦もなく完成するであろうその絵巻物を、未完成のままに後代に伝えて、呉家《くれけ》を呪いつくす程の恐ろしい心理遺伝の暗示材料としたのは何故か……一千百年後の今日、吾々の学術研究の材料として珍重さるべき因果因縁を作ったのは何故か……」
私は思わず溜息をさせられた。正木博士の話から湧出《わきだ》して来る一種の異妖な気分に魅せられて、何となく狂人《きちがい》じみた不可思議な疑いが、だんだん嵩《こう》じて来るのを
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