もので、とうとう山伝いに画房まで逃げて来ると、担いで来た屍体を浄《きよ》めて黛夫人の残骸の代りに床上に安置し、香華《こうげ》を供え、屍鬼を祓《はら》いつつ、悠々と火を焚いて腐爛するのを待つ事になった。ところがそのうちに又、二三日経つと、思いもかけぬ画房の八方から火烟《ひけむり》が迫って来て、鯨波《ときのこえ》がドッと湧き起ったので、何事かと驚いて窓から首をさし出してみると、画房の周囲は薪が山の如く、その外を百姓や役人たちが雲霞《うんか》の如く取り巻いて気勢を揚げている様子だ。つまり何者かが、コッソリ呉青秀の跡を跟《つ》けて来て、画房を発見した結果、こんなに人数を馳《か》り催して、火攻めにして追い出しにかかった訳だね。その時に呉青秀は、この未完成の絵巻物の一巻と、黛夫人の髪毛《かみのけ》の中から出て来た貴妃の賜物《たまもの》の夜光珠《やこうじゅ》……ダイヤだね……それから青琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《せいろうかん》の玉、水晶の管《くだ》なぞの数点を身に付けて、生命《いのち》からがら山林に紛れ込んだが、それから追捕を避けつつ千辛万苦する事数箇月、やっと一ヶ年振りの十一月の
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