非《あら》ザルベキモ亦自明ノ理ナルベシ。而シテ此《かく》ノ如キ犯罪ニ対シテ、吾人法医学者ハ、如何ニシテ犯罪ヲ調査シ、兇器ヲ研究スベキヤ。如何ナル基礎知識ニ照シテ、犯行ノ径路、手段ノ内容ヲ明カニスベキヤ――云々――
[#ここで字下げ終わり]
 ……どうです諸君。吾が畏敬すべき法医学者、若林鏡太郎君は、遠からず全世界に大流行を来《きた》すべき「精神科学応用の犯罪」を研究して、その流行を未然に喰い止めるべく、その実例を蚤取眼《のみとりまなこ》で探している。その犯罪の被害者らしい精神病者や自殺者が、地上到る処にウヨウヨしているに拘わらず、その犯行の手がかりとなるべき暗示材料、その他の証拠が見当らないために、本当の研究が発表出来ないという悲惨事に直面して、あらゆる苦心惨憺を続けている。そうして、あらゆる人間の身振り、素振り、眼付き、手付き、口つき、言葉つきの端々《はしばし》に到るまでも、精神科学応用の犯罪ではないかと疑い続けているのだ。
 ……然《しか》るにだ……。
 ……諸君どうです……。
 ここに一つドエライ研究材料が、吾輩の処へ転がり込んで来たものだ。……もっともコイツを最初に発見したのは
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