して二つの新しい生物になって行く……というのが事実上の事実になっているのであるが、これは一体、どうした理由であろうか。進化の度の最も高い人間の胎児は何故《なにゆえ》に、最も長い胎生の時間を要するのであろうか。換言すれば、
「何が胎児をそうさせるか」
 という問題に就いて適当の解釈を加えようとすると、現代の科学知識では絶対に不可能である事が発見される。やはり唯、不思議というよりほかに説明の仕様がない事になっているのである。
 以上は胎児に関する不可思議現象の実例であるが、次に、こうして出来上った人間の「肉体」を、解剖学方面から研究、観察してみると又、同じような不可思議現象が数限りなく現われて来る。
 すなわち人間の肉体なるものを表面から観察してみると、その進化の度が高いだけに……換言すればその胎生に念が入っているだけに、他の動物よりも遥かに高尚優美に出来上っている事が、とりあえず首肯《うなず》かれるであろう。その柔和な、威厳を含んだ眼鼻立から、綺麗な皮膚、美的に均整した骨格や肉付きまで、如何にも万物の霊長らしく見受けられるのであるが、しかし一度《ひとたび》その肉体の表皮を剥《め》くって、
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