ればなる程ハッキリと眼を醒して、色々な活躍を初める事になるのだ。
 たとえば或る人間が、或る感情とか、意志とかの一つだけを、極度に昂奮させたまま眠りに落ちたとする……『あのダイヤが欲しいナア』とか……『憎いアンチキショウを殺してやりたい』とか思って昂奮しいしい眼をつむっていると、やがて、その脳髄が熟睡のドン底に落ちた時に、その脳髄と一所に睡っている細胞の中でも、その意識だけがタッタ一つ睡り後《おく》れて眼を醒している。そうしてその意識は、良心とか、常識とか、理智とかいうものと連絡を失った、片チンバの姿のままで起き上って、全身の細胞が持っている反射交感作用を脳髄の代りに使いながら動き出す。そうして全身の細胞の中から、必要に応じて勝手気儘に呼び起した判断、感覚なぞいうものと連絡を取りつつ、見たり聞いたり、考えたりして、望み通りの仕事をする。欲しいダイヤを失敬したり、憎いアンチキショウを殺したりするのであるが、しかし、そんな仕事をしている途中の出来事は、脳髄を通過した印象でないからチットモ記憶していない。あとで眼を醒してもケロリとして、平生とチットモ変らないアンポンタン・ポカン人種に立ち帰っ
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