こ》いだりする際にマザマザと体験しているところであろう。
 昔の人は迷信が深かったから、暗闇の中なぞを行く時には、恐怖のために脳髄を疲らして色々な幻覚や倒錯観念に陥ったものだ。そんな幻視や幻感が、幽霊になったり、妖怪|変化《へんげ》になったりして、物の話に伝わり残っているのであるが、しかも、そんな事実を笑う連中はお気の毒ながら現代式のハイカラな神経の持主とはいえないのだ。神経衰弱とヒステリーと、制限剤と睡眠薬を持ちまわる紳士淑女の仲間に這入れないのだ。
 諸君みたような近代人の中《うち》でも、特に目まぐるしい都会生活をやっている人間たちは、真昼さ中でも脳髄の機能を疲らしているから、色んな意識作用や、判断感覚なぞいうものが遊離して、全身の神経末梢……細胞相互間の反射交感機能を這いまわりつつ、フラフラチラチラとした夢中遊行状態になりかけているのだ。……だから、大きな煙突の傍を通ると、今にも頭の上に倒れかかって来るような気がして、思わず急ぎ足になるのだ。……眠っている枕元に、往来の電車の音が走りかかって来るような気がして、ツイ電燈を灯《つ》けてみたくなるのだ。そのほか、ストーブが欠伸《あくび
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