不能になると、そこで反射交感されていた『笑いの電流』だけが第三条の規約通り、ほかの意識との連絡を失って遊離してしまう。そうして脳髄以外の全身の細胞が元始以来遺伝して来ている反射交感の機能を先廻りに使用しながら、何でもカンでも無暗矢鱈《むやみやたら》に笑わせるのだ。ほかの『怒り』や『悲しみ』の電流が動きかけても、その電流が中央の反射交感台を遠まわりして来るうちに、遊離している『笑いの電流』の方が、直接に全身の細胞を馳けまわって、先へ先へと笑い散らかして行くのでほかの感情が外へあらわれる隙《すき》が無いのだ。これが俗に『笑い中気』という奴で『怒り中気』でも『泣き中気』でも、みんな、おなじ理屈で起るのだ。
 いうまでもなく、これは脳出血から来た故障だから、病理解剖をして頭の蓋《ふた》を取ってみればすぐにわかる。……『ハハア。ここが笑いの電流を交感する処だな』……という事実が一目瞭然する訳であるが、しかし、実をいうとコンナ風に、肉眼で見える脳髄の故障というものはドチラかといえば例外に近い方で、まだこのほかに眼に見えない脳髄の故障が演出する怪奇現象の種類がドレ位あるか、わからない。所謂《いわゆる
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