容が厳秘中であったが、右は同科新任教授正木博士が私費を投じて開設したものである事が判明した。右に就《つ》き正木博士は同教授室に於て、往訪の記者に対しかく語った。
[#ここで字下げ終わり]
世間では今度、吾輩が九大で開始した「解放治療」を吾輩の独創だとか、嶄新《ざんしん》奇抜だとかいって騒いでいるようであるが、正直のところを云うと決して吾輩の独創でもなければ、嶄新奇抜な療法でもないのだ。すなわちこの地球表面上は、昔々の大昔の、歴史にも伝説にも残っていない以前から、狂人の一大解放治療場になっているので、太陽はその院長、空気はその看護婦、土はその賄係《まかないがか》りに見立てられ得るのだ。
……といっても吾輩は別に奇矯な言辞を弄《ろう》しているのではない。そうした事実を断言し得る相当の理由があるから云うので、何を隠そう吾輩の「精神病研究」の第一歩はこの「地球表面上が狂人の一大解放治療場になっている」という事実に立脚していると云ってもいいのだ。
それは何故かというと、元来この地上に生み付けられている人間は、身分の高下、老若男女の区別を問わず、指一本でも自分の自由にならぬか、又はどこか足
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