面《うわべ》の口実。花の蕾《つぼみ》が開かぬまんまに。あわれ落ち行く無間《むげん》の地獄じゃ……チャカポコチャカポコ……
 ▼あ――ア。あわれ落ち行く無間の地獄じゃ。こんな患者を専門にして。やって行くのがホントウ国でも。音に名高いマッタク博士じゃ。それも初めは普通のお医者で。やっていたのがこの種の患者は。貰う謝礼がステキに大きい。そこでだんだんそちらの専門。今じゃ大入《おおいり》大繁昌だよ。ナント吃驚《びっくり》タマゲタ市《シチー》に。善美つくした病院構えて。中に並ぶが現代文化の。粋《すい》を揃えた拷問道具に。息も洩らさぬ殺人設備じゃ。一眼見たらば真夏の土用も。零下何度の大寒地獄じゃ。それに引換え表の通りは。光り輝やく玄関構えに。並ぶ自動車その数知れない。しかも富豪や名士の家庭の。秘密握っているのが強味じゃ。強請《ゆすり》次第にお金が取れます。もしもその手が利かない時には。当の本人、秘密の正体。無理に作った正気の患者を。誤診だったと発表するぞよ。すぐに全快退院させるぞ。又は患者の味方となって。そちらの秘密を世間へ発《あば》くぞ。なんぞかんぞと絞った揚句《あげく》に。ゆする相手が破産をし
前へ 次へ
全939ページ中212ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング