ガイ患者が出ますと。ほかの病気と品事《しなこと》かわって。あとに残った正気の家族が。あるにあられぬ責め苦を受けます。トテモこうして自宅《うち》へは置けない。どうかせねばと思案をしても。どうも仕様が見当りませぬ。とかくするうち無理算段した。金は無くなる、仕事は出来ない。やがて一家が干乾《ひぼ》しは眼の前。さても切なや、悲しや、辛《つ》らや……チャカポコチャカポコ……
 ▼あ――ア。さても切なや、悲しや、辛らや、それも吾身は露いとわねど、お年寄られた親様はじめ。可愛い吾児《わがこ》の行末までも。生きて甲斐ない一人のために。棄てて介抱するのが道理か。人に迷惑かけないうちに。患者もろとも首でも縊《くく》って。一家揃うて死ぬのが道かや。何の因果で斯様《かよう》な憂《う》き目と泣いて怨めど肝腎カナメの。当の患者はアラレヌ眼付きで。キョロリキョロリとしているばっかり……チャカポコチャカポコ……
 ▼あ――ア。キョロリキョロリとしているばかりじゃ。もとの姿は残っていても。元の心は藻抜《もぬ》けの殻だよ。人の形をしているだけに。犬や猫より始末が悪いよ。情ないとも何とも彼《か》とも。なろう事なら代ろうもの
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