落ちかかるよ。残る一つの頼みの綱なら。赤い煉瓦の院長様よと。出来ぬ算段して来て見れば。どこへ行っても満員ばかりじゃ……チャカポコチャカポコ……
▼あ――ア。どこへ行っても満員ばっかり。しかもコイツが一段落ちて。その日暮しのシガナイ稼ぎじゃ。嬶《かかあ》は内職、娘は工場《こうば》。なぞというような一家となったら。酷《むご》さ悲惨《みじめ》さ話にならない。介抱どころか、お薬どころか。すぐにそのまま一家が揃うて。顎《あご》を天井に吊るさにゃならぬ。いっそ狂うて死んでもくれたら。まだも増しよと怨《うら》んでみても。当の本人キチガイ殿は。死ぬるどころか大飯喰ろうて。治癒《なお》る当《あ》て途《ど》もない顔つきだよ……チャカポコチャカポコ……
▼あ――ア。治癒《なお》る当てどもない顔付きだよ。こんな調子で人間世界に。麦の黒穂か菜種の馬か。花や野菜の狂いと同様。わけもわからず理屈も立てずに。ヒョクリヒョクリと現われ飛び出す。数え切れない精神病者を。無料《ただ》で引受け入院させるは。広い世間に大学ばっかり。それも寝台が何百あろうか。しかも慈善でするのじゃ御座らぬ。学生教授の研究材料。生きた標本講義
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