に来る連中の中でも。親や兄弟、妻子《つまこ》やなんぞは。どうか治癒《なお》して下さりませと。涙流して溜息ついて。頼み入るのが少くないが。そんな骨肉《みうち》の連中の中でも。ホンニ心《しん》から真情《まごころ》籠《こ》めて。治療《なお》すつもりで介抱するのは。実のところが母親ばっかり。それも真実わが腹痛めた。息子か娘が患者の場合じゃ。ほかの骨肉《みうち》の連中と来たなら。同じ血分けた父《おや》兄弟でも。実に冷淡無情なものだよ。殊《こと》にお若い妻君なんぞは。申訳《もうしわけ》だけ二三日位は。側で溜息|吐《つ》くかと思えば。里の方から迎えに来るのを。待っていたようにハイチャイ極《き》め込む。それもまだまだ最極上だよ。医者に患者を渡すと間もなく。部屋がどこやら決定《きま》りもせぬうち。電話かけにか便所に行くのか。帯の間の鏡を覗いて。鼻のアタマをパタパタやるうち。スラリと姿を消したが別れじゃ。二度と姿を見せないものだよ……チャカポコチャカポコ……
 ▼あ――ア。二度と姿を見せぬが普通じゃ。ドウセ治癒《なお》らぬ病気と決定《きま》れば。医師に見せるは体裁だけだよ。棄てに来るのが本当の腹だよ。生き
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