「その反対です。正木先生は、当然あなたから御自分の運命を咀《のろ》われるのを覚悟されて、この研究に着手されたのです。……否……今一歩、突込んで申しますと、正木先生は、そうした結果になるように二十年前から覚悟をきめて、順序正しく仕事を運んで来られたのです。御自身に発見された曠古《こうこ》の大学理の実験と、貴方の御運命とを完全に一致させるべく、動かすべからざる計劃を立てて、その研究を進めて来られたのです」
 それは私にとって一層の恐怖と、戦慄に値する説明であった。われ知らず息苦しくなって来る胸を押えつつ、吐き出すように問うた。
「……それは……ドンナ手順……」
「それはここに在ります書類を御覧になれば、お解かりになります」
 と云ううちに若林博士は、今まで話片手《はなしかたて》に眼を通していた書類の綴込みをパタンと閉じて、恭《うやうや》しく私の前に押し進めた。
 私も、それが何かしら重要な書類の集積に違いない事を察していたので、同じように鄭重《ていちょう》な態度で受取った。そうして、とりあえずパラパラと繰って内容を検《あらた》めてみたが、それは赤い表紙のパンフレットみたようなものを一番
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